Dawn of brand-new days.

 目覚めは水面に雫が垂れたように、広がる波紋と共に覚めていく。カーテンの隙間から新たなページとなる(少なくとも僕にとっては)一筋の朝日がのぞいていた。エネルギーに満ちたその一本の光の筋はどこまでも続く荒野に走る道のように壁を伝い天井まで伸びていた。気が付くと素足のままテラスに飛び出ていた。11月の空気というものだろうか、ひやりと体の芯まで透き通っていくようだ。吐く息は白く曇り、瞬時に周りの空気と同化し拡散していく。ただ、何か意志を持ったようにしばらくただよう者もいる。体の内部から生まれたその何かは真なるぬくもりを持つ故に熱を奪い去られ、苦悶の中に朽ちてゆくのだ。
 ふと見上げると目覚めを祝福するかのような朝焼けに目を奪われた。

無音。

 辺りの民家では朝食の準備が始まっていることだろう。せわしなく働く母親と、朝刊を手に取り読み出す父親の姿。眠気眼で食卓の椅子に向かってくる子供と、朝の無機質なテレビから流れてくるマスメディアのニュース。平和な一日はこうして始まるのだ。
 朝焼けはちりちりと皮膚を刺し、吸い込む空気と足元の冷たさで我に返る。 どれほどそうしていただろうか。時間の感覚が分からなかった。カラスが遠くのほうで鳴いた。彼らにとっても同じ朝なのだ。まぶたを閉じても光は透過し、まぶたの奥まで体を焼いた。それはまるで一人の人間と同じ姿をした影のようなものを一枚剥ぎ取った感じに似ていた。それはアカのようなものでありチリでもあるのだ。きっと突然脱皮をするように、新しい姿になることはできないし、絡みつく棘が自らを刺すだろう。分かってはいるのだ。

そして、こうしてまた一巡していくのだろう。


Happy Birthday